1型糖尿病の食事療法において、「カーボカウント(Carbohydrate Counting)」は血糖管理を効果的に行うための基本的かつ重要な方法です。以下にその概要と具体的なカウント方法を説明します。
◆ カーボカウントとは
カーボカウントとは、食事に含まれる「炭水化物(carbohydrate)」の量を把握して、それに見合ったインスリン量を調整する方法です。
1型糖尿病ではインスリンを外部から補う必要があるため、食事内容に応じてインスリンの量を調節する必要があります。
◆ なぜ炭水化物に注目するのか?
炭水化物(糖質)は食後の血糖値に最も大きな影響を与える栄養素です。
主な炭水化物源:
ごはん、パン、麺類
芋類、とうもろこし
果物、ジュース
砂糖、甘いお菓子
牛乳、ヨーグルト(一部含む)
◆ カーボカウントの種類(2段階)
● 基礎編(Level 1)
食品に含まれる炭水化物量を「グラム単位」で把握し、毎食のインスリン量を固定して対応する方法。
→ 例:「朝食で45gの炭水化物を摂るならインスリン3単位」など。
● 応用編(Level 2)
「インスリン・カーボ比(ICR:Insulin-to-Carbohydrate Ratio)」を使って、炭水化物量に応じたインスリン量を毎回調整する方法。
◆ 具体的なカウント方法(応用編)
① 食品の炭水化物量を知る
食品表示を確認(糖質=炭水化物−食物繊維)
炭水化物早見表(糖尿病用食品交換表など)を活用
例:
ごはん(白米)150g → 約55gの炭水化物
食パン6枚切り1枚 → 約25g
バナナ1本(中サイズ) → 約20g
牛乳200ml → 約10g
② 食事全体の炭水化物量を合計
例)朝食:
食パン1枚(25g)
バナナ(20g)
牛乳(10g)
→ 合計:55g
③ インスリン・カーボ比(ICR)を使ってインスリン量を計算
ICRとは:炭水化物〇gあたりインスリン1単位が必要という目安です。
例:
あなたのICRが「10g:1単位」の場合 → 55g ÷ 10 = 5.5単位
→ 朝食前に5.5単位の速効型インスリンを注射
※ICRは人によって異なり、主治医と相談して決定します。また、時間帯によってICRが変わることもあります(例:朝は10g:1単位、昼は12g:1単位など)。
◆ 補足:血糖値による補正も必要
血糖値が高めの場合は「補正インスリン」を追加します。
**インスリン感受性因子(ISF)**を用いて、1単位のインスリンで血糖が何mg/dL下がるかを計算
例:ISF=50 → 血糖が150mg/dL高ければ追加で3単位(150÷50)
◆ 実践のためのポイント
ポイント | 説明 |
---|---|
食品の炭水化物量を覚える | よく食べる食品の糖質量を覚えると便利 |
アプリや表を活用 | 「あすけん」や「カロミル」などのアプリも有用 |
血糖変動を記録 | 食後の血糖値とインスリン量を記録し、調整に役立てる |
血糖自己測定 or CGM | 効果的なカーボカウントのために必要不可欠 |
◆ まとめ
手順 | 内容 |
---|---|
1 | 食品の炭水化物量を知る |
2 | 食事全体の炭水化物量を合計 |
3 | ICRを使ってインスリン量を計算 |
4 | 血糖値に応じて補正インスリンを追加(必要に応じて) |