1型糖尿病に対する**強化インスリン療法(強化インスリン療法:Intensive Insulin Therapy)**は、より生理的に近いインスリン投与を行い、血糖コントロールを最適化する治療戦略です。この治療においては、**自己血糖測定(SMBG)およびリアルタイム持続血糖モニタリング(rtCGM)**が非常に重要な役割を果たします。


◆ 強化インスリン療法とは?

■ 基本的な考え方

  • 1型糖尿病では体内のインスリン分泌が完全に失われているため、外部から基礎インスリンと追加インスリンを分けて補う必要があります。

  • **「生理的なインスリン分泌に近づける」**ことが目的。

■ 方法は2つ

方法説明
① 多回注射療法(MDI)毎日1回の基礎インスリン+毎食前の速効型インスリン(1日4回以上)
② インスリンポンプ療法(CSII)基礎インスリンと追加インスリンをインスリンポンプで持続注入

◆ 自己血糖測定(SMBG:Self-Monitoring of Blood Glucose)

■ 方法

  • 指先から採血して血糖値を測定する

  • 通常、1日4~7回(起床時・食前・食後・就寝前など)

■ 役割

  • インスリン量調整の判断材料

  • 低血糖や高血糖の早期発見

  • 食事・運動・体調の影響の把握

■ 限界

  • 測定回数が少ないと血糖変動の全体像がわかりにくい

  • 夜間や無自覚低血糖を見逃しやすい


◆ リアルタイムCGM(rtCGM:Real-Time Continuous Glucose Monitoring)

■ 仕組み

  • 皮下にセンサーを装着し、5分ごとに間質液中のグルコース濃度を測定

  • スマートフォンや専用端末でリアルタイムで血糖トレンドを表示

■ 主な製品(2025年現在)例

  • Dexcom G7

  • FreeStyle Libre 2/3(リブレ)

  • Medtronic Guardian Sensor 4 など

■ 特徴と利点

項目内容
リアルタイムで把握血糖値の上昇・下降の傾向を矢印で表示
低・高血糖アラートしきい値に達するとアラームで通知
血糖のパターン分析血糖日内変動、夜間の低血糖なども可視化
治療効果の評価TIR(Time in Range)、GV(血糖変動)などを分析可能

◆ SMBGとrtCGMの違いと補完関係

比較項目SMBGrtCGM
測定頻度手動、1日数回自動、1日288回以上
トレンド表示×○(矢印やグラフ)
アラート機能×○(低血糖・高血糖)
精度高い(特に静脈血糖に近い)わずかに遅延あり(5~10分)
必要性補助的に併用することもありSMBGの補完あるいは置き換え可

※最新のrtCGMは精度が高く、インスリンポンプとの連動で**自動インスリン制御(ハイブリッドクローズドループ)**も可能になっています。


◆ 強化インスリン療法 × CGM の効果

  • HbA1cの改善

  • 低血糖リスクの低下(特に夜間)

  • 血糖の安定(TIRの増加)

  • 治療満足度の向上とQOLの改善


◆ 実際の運用例(MDI+rtCGM)

  1. 起床時にCGMの数値を見る → 血糖が高ければ補正インスリンを追加

  2. 朝食前にカーボカウント → 必要な速効型インスリンを計算

  3. CGMが急上昇を示せば、インスリン追加や運動で対応

  4. 夜間の低血糖がアラートで分かり、事前に糖分補給

  5. 週ごとのCGMレポートでパターンを把握し、医師と調整


◆ まとめ

項目内容
強化インスリン療法基礎インスリン+追加インスリンを柔軟に調整
SMBG血糖管理の基本、補正や自己管理の判断に使用
rtCGMリアルタイムで血糖トレンドを把握し、予防的対応が可能
相乗効果精度の高い血糖コントロール、低血糖予防、QOL向上