内分泌代謝内科専門医が扱う**二次性高血圧(secondary hypertension)**は、特定の内分泌疾患などの明確な原因によって生じる高血圧を指し、以下のような疾患が代表的です:


主な内分泌性二次性高血圧の疾患:

  1. 原発性アルドステロン症(Primary Aldosteronism, PA)

  2. 褐色細胞腫・パラガングリオーマ(Pheochromocytoma / Paraganglioma)

  3. クッシング症候群(Cushing’s syndrome)

  4. 甲状腺機能亢進症・低下症(Thyroid dysfunction)

  5. 先端巨大症、先天性副腎過形成など稀な疾患


一般内科医と内分泌代謝内科専門医による診療の違い

項目一般内科医内分泌代謝内科専門医
病態の理解一般的な知識に基づき高血圧管理を行う各疾患の分子病態、ホルモン動態、遺伝背景に基づいた詳細な評価が可能
診断能力スクリーニング検査を行う程度(例:PAC/PRA比)精密検査(負荷試験、画像診断、静脈サンプリング)を適切なタイミングで実施
治療の適切性原因疾患を見逃す可能性がありうる適切な内服、手術適応の判断、術前準備、術後フォローを行える
治療結果・予後二次性高血圧を見逃すと、心血管イベントのリスク増大原因疾患を治療することで、根治あるいは大幅な血圧改善が期待できる
チーム医療一般的な紹介ベース外科、遺伝カウンセラー、核医学など多職種との連携が強い

具体例での違い

1. 原発性アルドステロン症(PA)

  • 専門医

    • スクリーニング〜確定診断(負荷試験、CT、AVS)を体系的に実施。

    • 片側病変なら手術、両側ならMRAによる治療など、正確な治療選択が可能。

2. 褐色細胞腫

  • 専門医

    • メタネフリン、クロモグラニンA、MIBGシンチ、MRIなど適切な診断。

    • 術前α遮断薬導入、外科・麻酔科との連携による安全な手術誘導。

3. クッシング症候群

  • 専門医

    • 病型診断(ACTH依存性/非依存性)のための精密検査(CRH負荷、静脈サンプリング)を実施。

    • 手術や放射線療法、ステロイド補充などまで視野に入れた一貫治療。


まとめ

内分泌代謝内科専門医は、単なる血圧の管理だけでなく、疾患の原因そのものを診断・治療することができます。これにより、以下の点で医療の質に大きな差が出ます:

  • 診断精度の向上

  • 治療の根治性

  • 患者の長期予後改善

  • 医療費の削減(原因治療による長期的な薬物削減)

したがって、コントロールが難しい高血圧、若年発症、低K血症などの「red flags」がある場合は、内分泌代謝内科専門医への紹介が強く推奨されます。