1型糖尿病は、自己免疫によりβ細胞が破壊されることによりインスリン分泌不全となり血糖値が上がる状態です。インスリンを“うまく”補充すれば血糖値をコントロールすることが可能であり基本的に食事制限は必要ありませんし、1型糖尿病ではない方と同様の生活を送ることができます(日本ではパイロットにはなれません)。

 しかし、1型糖尿病を取り巻く環境には様々な問題があります。

①“糖尿病”“インスリン”という社会的スティグマ

  • 幼稚園、小学校になっても給食時にインスリン注射に行く母親
  • 針は危険であり保健室でないとインスリンを打てないと言われた高校生
  • 部活中低血糖でしんどいのにさぼっていると思われる高校生
  • 1型糖尿病であることを打ち明けると内定が取り消しになるかもと不安な大学生
  • 低血糖になると製造ラインが止まるので高めにコントロールしている方
  • 昼食前は職場でインスリンが打てないので食後にこっそり打っている方

未だ様々なスティグマが存在しています。周囲の環境が変わることを期待したいところですが・・・

我々は学校に直接お伺いし、担任や保健の先生に1型糖尿病についてしっかりと説明させていただいています。直接お伺いすることがとても大切だと考えています。インスリンを“うまく”補充すれば特に注意することがないこと、他の生徒と区別をしてはいけないことをお願いしています。そのためには先生にも安心が必要ですのでDEXCOMを主に使用しています。また学校で何か問題が生じたときにすぐ対応できるようE-Mailなどを用いて担任、保健の先生といつでも直接連絡できる体制を整えています。

職場でのスティグマに対しても患者さんが希望された場合、直接職場に出向き必要な方に上記、同様の説明をしています。流石に会社の方とはE-Mailなどでは連絡を取り合っていません。

保健室でインスリンを打つことが嫌といった高校生は、単に注射が嫌ではなくいつも友人が保健室まで一緒に来てくれることが申し訳ないので嫌でした。そこでインスリンポンプ(620G)を外来導入し教室でインスリン補充ができるように対応しました。しかし、大学生になった今、日常生活上チューブが邪魔でポンプ装着時間が短くなったためパッチポンプ(テルモメディセーフウィズ)を導入し満足度が上がっているようです。

あくまでもつぶやきですが、時には6mmの針を渡してジーパンの上からの注射することもお勧めしています。

②インスリンを“うまく”補充することの難しさ

インスリンを“うまく”補充する=TIR(皮下グルコース濃度70~180の割合)を高くすることですが、そうは簡単にいきません。数年前まではカーボカウントをすればある程度“うまく”コントロールできると考えていましたが、CGMやFGMが当たり前の時代になるとカーボカウントは必要条件であり十分条件ではないことは明らかです。ある程度の食事療法を行っていると、70~180を外れたときにインスリン、ブドウ糖を補充すればTIRを高く保つことは可能ですが大変面倒です。現在は費用の面でリブレが主流ですが、個人的にはSAPやDexcom、インスリンはフィアスプやルムジェブが必要だと考えています。
 当院では患者さんから“うまく”調整できない時、何か疑問があるときには適宜FGMやCGMの日内変動の画像と食事の写真などをLINEで送っていただきその都度相談し解決するような体制にしています。それでも中々“うまく”補充できないのが現状です。

②1型糖尿病患者どうしがつながる現場がない

1型糖尿病診療において医療者にはFGMやCGMを把握できる豊富な経験、カーボカウント、脂質と血糖変動、最新の医療機器やインスリン製剤の知識などが必須ですがそれだけでは不十分です。1型糖尿病患者さんには他の1型糖尿病患者さんの経験が必要なのです。SNSなどから情報を得ることが可能ですが、一部専門家の知識を超える内容もありますが不十分な内容もあり情報の取捨選択をすることは困難です。当院では、現在60名程度の1型糖尿病患者さんが通院中ですので、患者さんから得た情報を選別して他の患者さんに紹介することができます。それでも所詮、また聞きレベルですから積極的に“患者会”を開催し共に悩んでともに学ぶ体験型勉強会も開催しています。コロナのおかげでキャンセルですが。

 

上記、当院の1型糖尿病診療の実際というよりは院長の信念です。まだまだありますので適宜、追記していきます。