内分泌代謝内科に受診される患者さんの中で多いのが甲状腺疾患です。健診で甲状腺が腫れている、最近しんどくて甲状腺が心配など多くの患者さん(元気な方が多いので患者さんではないかもしれませんが)が受診されます。当院での甲状腺疾患、特に甲状腺機能低下症(橋本病)の現場を再現したいと思います。
Aさん 55歳女性
健診で甲状腺がはれていると指摘されて受診。母が甲状腺疾患で少し心配。
既往歴 高コレステロール血症で薬を服用している。
ヨードの過剰摂取(イソジンのうがい薬、根昆布たくさんなど)なし
Aさん 数年前から健診でのどが腫れていると言われています。最近便秘がひどいような気もします。
院長:触診では甲状腺が腫れているだけではなくて硬いですね。橋本病に典型的なパターンです。右側に結節(腫瘤)を触れますね。血液検査で甲状腺機能低下症になっていないかを確認しましょう。結果が出るまで50分ほどかかりますのでその間に超音波検査をして結節が癌ではないかどうかを確認させてください。
★甲状腺機能を測定する機器:約50分で甲状腺機能を評価できます。少し音がうるさいです。
院長:甲状腺エコーの画像です。慢性甲状腺炎(橋本病)の画像です。内部性状が不均一です。内部血流は豊富ではありません。内部の血流は甲状腺機能やTRAbなどの自己抗体の存在によって変化します。
正常の甲状腺画像です。実際には私(院長)の甲状腺画像を見てもらったり電子カルテに保存している画像と比較して確認をしていただきます。
画像と甲状腺機能でほぼ診断は可能ですが、確定診断のためガイドラインの通り自己抗体を測定します。
院長:画像、甲状腺機能検査から橋本病による甲状腺機能低下症と思われます。確定診断のため検査を追加しておきます。甲状腺腫大以外に、倦怠感、皮膚の乾燥、体重増加、耐寒性の低下、便秘などの症状はありませんでしたか?あればホルモン補充療法で改善すると思われます。また、放置しておくと認知症のような症状が出ることもあるのですがきちんと治療を行っているとその心配もありません。教科書にはのっていませんが髪質がぱさぱさになったり、節々の痛み、口内炎ができやすくなる方もおられるようです。あと、コレステロールは高くなりますので甲状腺の治療を行うとコレステロールの薬は飲む必要がなくなるかもしれません。髪の毛が抜けると書いておある教科書もありますが実際にはあまりおられない印象です。
治療はホルモン補充療法となります。一般的にはチラーヂンSを25μgから開始し甲状腺機能を確認しながら漸増していきます。安定した患者さんは3か月に1回受診していただき、半年~1年に1回程度甲状腺機能を確認しています。毎回の診察で触診しますが何らかの変化があった場合は超音波検査、血液検査を行う場合もあります。また、慢性甲状腺炎には甲状腺腫瘍がよく合併していますので年に1回、甲状腺超音波を行う場合もあります。
Aさん:一生薬を飲まないといけないのですか!!!
院長:そうですね、人それぞれ考え方があるのですが、私は「@@@」のように考えているのです。なので一生内服されることになってしまいますが、それほど大きな問題ではないと思っています。
Aさん:わかりました。一生、服用し続けますね。
★よくある質問のうち費用についてです。
費用(3割負担の場合)ですが、再診
院外薬局の場合、甲状腺機能を3項目(TSH、FT3、FT4)を行い、チラーヂンSを処方した場合、3割負担で3170円(+薬局の費用)になります。甲状腺機能低下症の場合はTSHとFT4の測定で十分ですので、2750円(+薬局の費用)になります。超音波検査を追加した場合は3640円(+薬局の費用)になります。
初診で甲状腺3項目、エコーを行った場合は、初診料含め3630円になります。