対象となる主な疾患
各疾患における診療の実際
内分泌代謝内科について
橋本病
橋本病とは
橋本病は別名、慢性甲状腺炎といって慢性的に炎症が起こる病気です。炎症の程度により甲状腺機能低下症になりホルモン補充療法が必要になります。橋本病の患者さんの約70%は甲状腺機能が正常です。
橋本病は自分で自分の甲状腺を攻撃する兵隊(自己抗体)によって生じますが、何故どのようなきっかけで自己抗体が出現するかはわかっていません。
橋本病の原因は自己免疫の異常です。しかし、自己免疫の異常がどのようなきっかけで起こるのか、いまだに明らかになっていません。
症状
甲状腺が腫れる(健診などでよく指摘されます)
むくみ、皮膚の乾燥、寒がり、便秘、脈が遅い、気力がない、肝機能障害など
検査
血液中の甲状腺ホルモン(FT3、FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定することで甲状腺機能低下症の有無を確認できます。さらに、抗甲状腺抗体(TgAb、TPOAb)の有無を確認し診断します。
当院では甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンは院内で検査を行うため採血から約40分で結果がわかりますが、抗甲状腺抗体は外注検査のため後日メールでの結果報告になります。
治療
甲状腺機能低下症に対して甲状腺ホルモン(チラーヂンS)の補充を行います。補充量は血液中の甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの値をみて決定します。
バセドウ病
バセドウ病とは
バセドウ病も橋本病と同じく自己抗体によって生じます。橋本病と異なり、この抗体は甲状腺を刺激することで甲状腺からホルモンを過剰に作らせ甲状腺機能亢進症を起こします。バセドウ病では自己抗体(TRAb、TSAb)が甲状腺を刺激します。バセドウ病患者さんの約15%に家族内に同じ病気の方がおられることがわかっています。
症状
疲れやすい、動悸(初期は軽度の運動時に動悸を感じる)、手の震え、甲状腺の腫れ、息切れ、発汗、体重減少、イライラ、下痢、眼球突出、まぶたの腫れ、肝機能障害
検査
血液中の甲状腺ホルモン(FT3、FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)、TRAb、甲状腺超音波検査で診断します。診断が難しいときは高度医療機関でアイソトープ検査(放射性物質が甲状腺に取り込まれる性質を利用した検査)を行って診断します。
治療
薬(抗甲状腺薬)による治療が一般的ですが、副作用(かゆみ、皮疹、関節痛、白血球減少、肝機能障害など)が起こりやすい薬なので、内服開始後から2か月の間委は2週間に1回血液検査を行い副作用が出現しないかを厳重にチェックします。
副作用で薬による治療が続けられない場合は、高度医療機関でアイソトープ治療や手術療法を行います。
生活習慣病
生活習慣病は、食習慣や運動習慣、さらに喫煙や飲酒などの生活習慣が、発症・進行に関与する病気のことです。例えば、以下のような病気が含まれます。
- 食習慣:
- 2型糖尿病(特に肥満に伴うインスリン抵抗性のタイプ)、脂肪肝、肥満、脂質異常症(高コレステロール血症、中性脂肪など)、痛風、尿酸、高血圧、歯周病など
- 運動習慣:
- 2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満
- 喫煙:
- 肺がん、食道がん、脳心血管病、慢性閉塞性肺疾患
- 飲酒:
- 肝障害、食道がん
健診で指摘されるメタボリック症候群とは生活習慣病の前段階です。
当院では、生活習慣病のうち、2型糖尿病を中心に高血圧、脂質異常症、脂肪肝、高尿酸血症の治療を得意としています。
高血圧
血圧とはまさに血管の中の圧力で、心拍数が1分間に70回とすると1日に100,800回血管を中から押す(圧力をかける)ことになります。なので、血圧が高いと血管を中から強い圧力で押していますので血管が傷みやすいことが想像されます。2019年度のガイドラインでは血圧は収縮期(上、高い方)が130mmHg未満、拡張期(下、低い方)を80mmHg未満にし認知症の原因となる脳卒中などの予防をしようということになっています。
二次性高血圧
手術でなおる高血圧~原発性アルドステロン症~
日本人の高血圧推定患者数は、4000万人、約3人に1人が高血圧といわれています。高血圧の原因の90%は不明で“本態性高血圧”と呼ばれます。しかし、高血圧の10%に検査をすれば原因が分かるもの、二次性高血圧と呼ばれるものが、中には手術で治る場合もあります。とくに原発性アルドステロン症は若い年齢の高血圧患者さんに多くみられ正しい検査と治療が必要です。ましたに内科クリニックでは高血圧患者さんに対して薬をだして血圧を下げるだけではなく、二次性高血圧が疑われる患者さんに対して標準的な検査を行い、病態に合った治療方法、治療薬を選択したいと考えています。
メタボリック症候群
ウエスト周囲径(男性 ≥ 85cm、女性 ≥ 90cm)が基準を超え、中性脂肪、低HDLコレステロール血症、血圧、血糖値の3つのうち2つを超えるとメタボリック症候群の診断を満たします。メタボリック症候群は生活習慣病の前段階の状態のことです。メタボリック症候群の方はインスリンが作用しにくく高インスリン血症となり、インスリンが不足しだすと糖尿病になりやすいと言われています。また、メタボリック症候群の方では肝機能障害を多く認めこの大半がアルコール性肝障害か非アルコール性脂肪肝です。非アルコール性脂肪肝の中には肝硬変、肝臓癌になりやすい非アルコール性脂肪性肝炎いわゆるNASHという病気が隠れています。なので、脂肪肝も放置するのではなく定期的に検査を行いながら食事、運動療法を中心に治療を進めていく必要があります。